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意味
前件がある要因・きっかけとなって、後件を制約する「条件文」を作る代表的な文法を比較します。
4つの文法を使った例文を確認してみましょう。
春になると、桜が咲きます。
春になれば、桜が咲きます。
春になったら、桜が咲きます。
春になるなら、桜が咲きます。
これらの文のどれが正しく、どれが正しくないかは日本語ネイティブならわかると思いますが、その理由を聞かれると困ってしまいますよね。
この4つの文法について、細かく違いを確認していきます。
文法確認
それぞれの文法の詳細を確認したい場合は、以下の記事を見てください。
~と
~ば
~たら
~なら
解説
改めて、最初の例文を見てみましょう。
春になると、桜が咲きます。
春になれば、桜が咲きます。
春になったら、桜が咲きます。
春になるなら、桜が咲きます。
この条件文の場合は「と」「ば」が使われます。
「たら」も話し言葉であれば使えますが、自然ではありません。
「なら」は使うことができません。
このように、4つの文法にはそれぞれ特徴があり、「使える場合」「使えるが不自然な場合」「使えない場合」に分けられます。
以下、条件別に整理していきます。
条件文を考える場合、「非過去」か「過去」かに分けて考えると整理しやすいです。
「なら」は基本的には過去の文には使えません。
非過去
一般条件
恒常的に成り立つ関係(前件が発生すれば、いつも後件が発生)を表す。
| と | ば | たら | なら | |
| 一般条件 | 〇 | 〇 | △ | ✕ |
お酒を飲むと、顔が赤くなります。
お酒を飲めば、顔が赤くなります。
お酒を飲んだら、顔が赤くなります。
お酒を飲むなら、顔が赤くなります。
「たら」は話し言葉であれば使えますが、「と」「ば」の方が自然に使われるので、「△」としました。
仮定条件
実際の起こるかどうかわからない、未実現の事柄を表します。前件は未実現の場合とすでに実現している場合のどちらもあります。
| と | ば | たら | なら | |
| 仮定条件 | ✕ | 〇 | 〇 | 〇 |
明日晴れると、キャンプに行きます。
明日晴れれば、キャンプに行きます。
明日晴れたら、キャンプに行きます。
明日晴れるなら、キャンプに行きます。
「なら」は「のなら/んなら」の形で使われることが多いです。
確定条件
ほぼ決まっている条件を表し、前件をきっかけとして新しい事柄が発生するようなことをいう場合に使われます。
文の頭には「もし」は使いません。
| と | ば | たら | なら | |
| 確定条件 | ✕ | ✕ | 〇 | ✕ |
ご飯を食べ終わると、部屋に来てください。
ご飯を食べ終われば、部屋に来てください。
ご飯を食べ終わったら、部屋に来てください。
ご飯を食べ終わるなら、部屋に来てください。
反事実条件
もし事実が反対なら実現するはずのことを述べる表現です。すでに実現してしまった事柄を述べる場合と、実現が不可能なことが明らかなような場合に使われます。
| と | ば | たら | なら | |
| 反事実条件 | ✕ | 〇 | 〇 | 〇 |
もっと頭が良いと、もっといい大学に入れるのに。
もっと頭が良ければ、もっといい大学に入れるのに。
もっと頭が良かったら、もっといい大学に入れるのに。
もっと頭が良いなら、もっといい大学に入れるのに。
前件が事実、後件が事実に反するという場合は、「なら」しか使えません。
連絡をくれると、もう少し早くしてほしかった。
連絡をくれれば、もう少し早くしてほしかった。
連絡をくれたら、もう少し早くしてほしかった。
連絡をくれるなら、もう少し早くしてほしかった。
習慣・反復動作
現在の習慣や反復動作を表す場合に使われます。
| と | ば | たら | なら | |
| 習慣・反復動作 | 〇 | 〇 | ✕ | ✕ |
部長は私の顔を見ると、仕事の文句を言ってくる。
部長は私の顔を見れば、仕事の文句を言ってくる。
部長は私の顔を見たら、仕事の文句を言ってくる。
部長は私の顔を見るなら、仕事の文句を言ってくる。
問いかけ(前文に焦点)
後件の成立が望まれている文脈で、そのためにどんな前件が必要かを述べる場合に使われます。
| と | ば | たら | なら | |
| 問いかけ(前文に焦点) | ✕ | 〇 | 〇 | ✕ |
A:どうすると、安くなりますか? B:3つ以上買うと、安くなります。
A:どうすれば、安くなりますか? B:3つ以上買えば、安くなります。
A:どうしたら、安くなりますか? B:3つ以上買ったら、安くなります。
A:どうするなら、安くなりますか? B:3つ以上買うなら、安くなります。
「たら」も問題はないですが、一番自然に使われるのは「ば」です。
終助詞
終助詞として使うことができ、聞き手にある行動を進める場合に使います。
| と | ば | たら | なら | |
| 終助詞 | ✕ | 〇 | 〇 | ✕ |
A:少し風邪を引いたみたい。 B:無理しないで早く帰ると?
A:少し風邪を引いたみたい。 B:無理しないで早く帰れば?
A:少し風邪を引いたみたい。 B:無理しないで早く帰ったら?
A:少し風邪を引いたみたい。 B:無理しないで早く帰るなら?
「ば」より「たら」の方が相手に本気で進めているニュアンスとなります。
過去
事実的条件
前件、後件ともにすでに発生した過去の事柄を表す場合に使われます。
| と | ば | たら | なら | |
| 事実的条件 | 〇 | ✕ | 〇 | ✕ |
友達にLINEすると、すぐに返事がきた。
友達にLINEすれば、すぐに返事がきた。
友達にLINEしたら、すぐに返事がきた。
友達にLINEするなら、すぐに返事がきた。
「ば」は「認識」を表す場合は前件、後件ともにすでに発生した過去の事柄でも使えます。
確かに言われてみると、自分が間違っていた。
確かに言われてみれば、自分が間違っていた。
確かに言われてみたら、自分が間違っていた。
確かに言われてみるなら、自分が間違っていた。
発見・意外な結果
先に記載した「事実的条件」と似ていますが、こちらは前件の動作の結果、後件の事柄を発見した(気づいた)という場合に使われます。
| と | ば | たら | なら | |
| 発見・意外な結果 | 〇 | ✕ | 〇 | ✕ |
箱を開けると、プレゼントが入っていた。
箱を開ければ、プレゼントが入っていた。
箱を開けたら、プレゼントが入っていた。
箱を開けるなら、プレゼントが入っていた。
同一人物の連続動作
条件文というよりかは、前件と後件の継起関係(物事が続いて起こる)を表す「~と」の特有な表現です。
| と | ば | たら | なら | |
| 同一人物の連続動作 | 〇 | ✕ | 〇 | ✕ |
先生は教室に入ると、すぐに授業を始めた。
先生は教室に入れば、すぐに授業を始めた。
先生は教室に入ったら、すぐに授業を始めた。
先生は教室に入るなら、すぐに授業を始めた。
通常は連続性の意味を強く持っている「と」が使われる場合が多いです。
過去の習慣
過去の習慣や反復動作を表す場合に使われます。
| と | ば | たら | なら | |
| 過去の習慣 | 〇 | 〇 | ✕ | ✕ |
夏休みになると、母の実家によく行ったもんだ。
夏休みになれば、母の実家によく行ったもんだ。
夏休みになったら、母の実家によく行ったもんだ。
夏休みになるなら、母の実家によく行ったもんだ。
「たら」は習慣ではなく「一回きり」「偶然」を表します。
時間的前後関係
前件と後件に時間的前後関係を必要とせず、同時発生する場合、後件→前件の流れの文にも使えるかどうかです。
| と | ば | たら | なら | |
| 時間的前後関係 | ✕ | ✕ | ✕ | 〇 |
夏休みに旅行に行くと、沖縄がいいですよ。
夏休みに旅行に行けば、沖縄がいいですよ。
夏休みに旅行に行ったら、沖縄がいいですよ。
夏休みに旅行に行くなら、沖縄がいいですよ。
「なら」は時間的前後関係を必要としないので、同時発生する場合、後件→前件の流れの文にも使えます。
文末に意志表現
文末に意志、勧誘、依頼、命令などの表現が使えます。
| と | ば | たら | なら | |
| 文末に意志表現 | ✕ | △ | 〇 | 〇 |
日本に行くと、一緒に観光しましょう。
日本に行けば、一緒に観光しましょう。
日本に行ったら、一緒に観光しましょう。
日本に行くなら、一緒に観光しましょう。
「ば」は「前件と後件の主語が異なる場合」または「前件に状態性の言葉が接続する場合」は文末に意志表現が使えます。
暑いと、エアコンをつけてください。
暑ければ、エアコンをつけてください。
暑かったら、エアコンをつけてください。
暑いなら、エアコンをつけてください。
まとめ
上記をまとめると以下の表のようになります。
| と | ば | たら | なら | |
| 一般条件 | 〇 | 〇 | △ | ✕ |
| 仮定条件 | ✕ | 〇 | 〇 | 〇 |
| 確定条件 | ✕ | ✕ | 〇 | ✕ |
| 反事実条件 | ✕ | 〇 | 〇 | 〇 |
| 問いかけ(前文に焦点) | ✕ | 〇 | 〇 | ✕ |
| 終助詞 | ✕ | 〇 | 〇 | ✕ |
| 事実的条件 | 〇 | ✕ | 〇 | ✕ |
| 発見・意外な結果 | 〇 | ✕ | 〇 | ✕ |
| 同一人物の連続動作 | 〇 | ✕ | 〇 | ✕ |
| 過去の習慣 | 〇 | 〇 | ✕ | ✕ |
| 時間的前後関係 | ✕ | ✕ | ✕ | 〇 |
| 文末に意志表現 | ✕ | △ | 〇 | 〇 |
こちらの表から見てもわかるように「たら」が一番幅広く使うことができる文法であると思います。
そのため、会話では「時間的前後関係」の部分だけ注意し、主に「たら」を使用するようにすれば大きな間違いは起こらないでしょう。






















先生は教室に入ると、すぐに授業を始めた。
先生は教室に入れば、すぐに授業を始めた。
先生は教室に入ったら、すぐに授業を始めた。
先生は教室に入るなら、すぐに授業を始めた。
通常は連続性の意味を強く持っている「と」が使われる場合が多いです。
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これの○と×記号の位置が誤っていると思います。
掲載されている文法書があればご掲示ください。
正誤の確認をお願いします。
ご指摘ありがとうございます。
修正いたしました。
どもありがとうございます。これはめっちゃ有用!