概要
皆さんは「おざなり」と「なおざり」という言葉の違いがわかりますか?
そもそもそれぞれの意味がよくわからないという人も多いかと思います。
同じ平仮名で作られた単語なので、見た目もイントネーションも似たような感じで混乱しますよね。
日本人でも違いを答えるのが難しい言葉の違いですが、日本語学習者にも聞かれることもありますので、教師の方々はしっかり違いを理解しておいてくださいね。
意味
それでは、辞書に書かれている意味を確認していきましょう。
いいかげんに物事をすること。その場のがれで誠意のないさま。(日本国語大辞典 第2版)
深く心に留めないさま。いいかげん。通りいっぺん。かりそめ。(日本国語大辞典 第2版)
かりそめ・・・一時的なこと。ちょっとしたこと。いいかげんなこと。
解説
辞書からもわかるように、2つの言葉は「いいかげん」という意味で共通しています。
しかし、何かを行う時に「おざなり」は「その場のがれで真剣に取り組まない」という意味を表すのに対し、「なおざり」は「その物事に注意を払わない」という意味が強いです。
簡単に言うと、「おざなり」はいい加減な取り組み方であったとしても行為が伴いますが、「なおざり」は行為そのものがなされていないのです。
「おざなり」は漢字表記にすると「御座成り」と書き、「お(御)」は接頭語、「ざ(座)」は座敷、「なり(形)」は形状を表します。その昔、江戸時代には、「宴会の席でその場だけの取り繕った言動をするさま」で、「当座の間に合わせ」という意味を「ざなり(座成)」や「ざしきなり(座敷形)」という言葉で表現していました。「おざなり」は「ざなり」に敬語の「お」がついたものですが、相手に敬意を示しているのではなく、皮肉を表現した反転用法として用いられています。
「なおざり」は漢字表記にすると「等閑」と書き、平安時代から使われていました。訓読みで「とうかん」と読むと同じ意味の漢語になります。
他にも、「直(猶)去り」とも表記され、「なお(直/猶)」は「そのまま」、「ざり(去り)」は「しない/その場を去る」と表します。このことから、「そのまま放置して何もしない」や「そのままにして立ち去る」という意味になります。
語源を知ることで、2つの言葉の違いが少しずつわかってきますね。
更に、漢字表記も知っておくと、より区別がつきやすいです。
また、同じ文を並べて意味の違いを確認してみましょう。
おざなりな返事しかしない彼氏に、彼女は怒りだした。
なおざりな返事しかしない彼氏に、彼女は怒りだした。
「おざなり」がOKで、「なおざり」がNGになる理由はわかりますか?
「返事をする」という行動をしているので、行動を伴う場合に使われる「おざなり」はOK、行動しない場合に使われる「なおざり」はNGです。
おざなりだった。
クレームを入れたが無視されて、対応はなおざりだった。
「無視された」ということは「行動がなかった」ということなので、行動を伴う場合に使われる「おざなり」はNG、行動しない場合に使われる「なおざり」はOKです。
それぞれの言葉についてまとめてみます。
漢字で書くと「御座成り」
漢字で書くと「等閑」または「直(猶)去り」
皆さんは、自分が頼んだ仕事が「おざなりにされる」のと「なおざりにされる」のはどちらが許せないですか?
私は・・・どちらも許せません(笑)
例文
おざなり
おざなりなスピーチ発表を聞いて、先生は怒り出した。
学生のおざなりな挨拶しかしない。
今年の新入社員は上司に対してなおざり
なおざりにされていることに気づいて腹が立った。
一週間前に頼んだ仕事がなおざりだった。
旦那に一日留守番を頼んだら、家事や洗濯など全て