五者とは
教師という仕事をしている人は一度は聞いたことがあるかもしれません。
五者とは以下のことです。
「学者」「役者」「芸者」「易者」「医者」
教師の五者と書きましたが、物事を伝える側の立場の人である「経営者」「管理者」「コンサルタント」にとっても、とても役に立つ考え方なので、ぜひ参考にしてみてください。
この「五者」の捉え方は人によって少し異なることが多いです。
私も「日本語教師」としての「五者」の在り方を自分なりに書いてみたいと思います。
教師の五者
学者
学者の本来の意味を辞書で見てみましょう。
①学問にすぐれた人。②学問を研究する人。
意味の通り、日本語教師として「豊富な知識を持つこと」が大事だということですね。
もちろんすぐに豊富な知識を得ることはできないので、常に日本語の知識に対して貪欲な「向上心」を持つことが大切だと思います。
物事を教えるためにはまず自分がインプットしなければならないので、どの教師も常に「知識を得る」ための行動はしているでしょう。
ただ、日本語教師のあるあるですが、「授業を行うための教案作り」で終わってしまう方が多いです。
私も日本語教師です。特に新人の頃は教案作りだけで徹夜していたような時もありました。気持ちはよくわかります。
しかし、その授業を行う準備だけを繰り返していたら「学者」としての知識はいつまでたっても身に付きません。
ぜひ、色々な日本語教育本を読みこんだり、勉強会に参加したり、他の教師と議論したり、自分のスキルをあげるために貪欲になってもらいたいと思います。
役者
役者の本来の意味を辞書で見てみましょう。
①能・歌舞伎・演劇を演ずる人。俳優。
②知略・駆引きなどにすぐれた人。
どちらの意味も含まれると思います。
俳優がドラマで演じている姿を見て、皆さんも惹きつけられた経験があることでしょう。
「人を惹きつける力を持つこと」が大事だというわけですね。
教師はしっかりと学生と信頼関係を気付かなければいけません。
学生は一人一人国籍も異なり、性格も異なり、バックグラウンドも異なります。
そのため、全ての学生に対して同じ対応をするのではなく、それぞれに合った意見やアドバイスをしなければいけません。
教師自身が一人一人に違った「役者」を演じる必要があるのです。
実際に授業の中でも「この子はおとなしい性格だから・・」「最近授業についてこれてないから・・」と考えながら、
学生に対する質問を自分なりにアレンジすることがあると思います。
そんな時も「役者」を演じているといえるでしょう。
現在の日本語学校では1クラス上限20名までと決められており、多くの学校がその上限ギリギリの学生数でクラスが作られています。
(実際その上限を超えたクラスを作っているどうしようもない学校もあるようですが・・・(笑))
そのため、一人一人のサポートをすることは大変ではありますが、学生をひとくくりに考えるのではなく、「一人一人の役者」であることを心掛けてもらえたらと思います。
芸者
芸者の本来の意味を辞書で見てみましょう。
多芸な人。遊芸に巧みな人。芸達者。
この意味はどうでしょうか?「芸者」に関してはこの「五者」を語るとき、人によって捉え方が違う場合が多い気がします。
私は日本語教師で必要だと思う「芸者」の意味としては「楽しく学べる環境を作ること」だと思っています。
みなさんそうだと思いますが、勉強はつまらないですよね(笑)
やはり少しでも楽しく学べるに越したことはないと思います。
そして、私は色々な学校の授業についてリアルな声が聞きたいので、日本語学校で勉強してる学生にどんな授業を受けているのかよく聞いています。
その答えのほとんどは「授業の質」「カリキュラムの内容」などではなく・・
「授業が面白いかつまらないか」
なんですよね。
それほど学生にとって「授業の楽しさ」は重要なんですよね。
ただし、面白くすることだけに固執して、他の「四者」を疎かにしてしまうと元も子もないので注意してくださいね。
脱線させて面白い話をするのではなく、「授業の中に楽しい要素を組み込む」ようにしましょう。
易者
易者の本来の意味を辞書で見てみましょう。
算木・筮竹を使い、易によって占うのを業とする人。
易者とは占い師のことですね。そのままの意味で捉えて、占い師を目指さないでくださいね(笑)
占い師と同様に色々な情報をもとに「相手に良い道を示してあげられること」と考えてみてください。
占い師も適当なことを言っているわけではないです。さまざまな統計データを分析して、色々なことを学ぶこと、人を見る力を養うことで占うことができるようになるんです。
それと同じで、教師は学生が目指す先の情報をしっかり理解し、分析しなければいけません。
試験の合格を目指している学生がいるなら、その試験の内容を知り、傾向をつかむ必要があります。
就職を目指している学生がいるなら、企業の動向まで知る必要があります。
日本語を学んでいる学生であれば、ほぼ全員と言っていいほど「日本語能力検定試験(JLPT)」を受験します。
日本語学習者が最初に目指す目標だと言えるでしょう。
ちなみにJLPTのことを詳しく知りたい場合は以下参考にしてくださいね。
ただ、そんな大事な試験の傾向どころか、どんな問題形式なのか、何点満点で何点が合格点なのか知らないという日本語教師を数えきれないくらい見てきました。
学生達の目指す目標を理解せず、学生を良い道に導くことは絶対にできません。
日本語教師は「外国人に日本語を教える」だけの仕事ではありません。
時代も変わり、さまざまな将来の選択肢ができた今だからこそ、日本語教師は「日本語以外の情報」をたくさん知る必要があると思っています。
占い師の話に戻りますが、占い師に腕があれば、根拠がある訳でも無いのに、しかも一度しか会ったことしかない相手なのに信じてしまいますよね。
教師も同じです。
学生は自分の目指す道のことをよく理解してくれて、腕がある教師の言葉はきっと信じるでしょう。
「試験に合格できない」「就職できない」と思っていても、教師の一言で「合格できる!」「就職できる!」という前向きな気持ちにさせることができるかもしれませんよ。
医者
医者の本来の意味を辞書で見てみましょう。
病気の診察・治療を職業とする人。医師。
こちらも「易者」同様、ほんとに「医者」を目指すわけではありません。
日本語学習においてももちろん、人は何かを続けていれば必ず「スランプ」が訪れます。
そんな時に「体力面や精神面で支えてあげることができること」が必要になります。
先ほどの「易者」でもお話しした通り、しっかりと信頼関係が築けていれば「教師の言葉」は大きく気持ちを変えることも可能です。
もちろん、日本語学習以外のことで悩むこともあるかもしれません。
違う国で一人で生活することはとても大変なことです。
学生の立場になって考えてあげてください。
些細な一言で学生を救ってあげることもできるかもしれません。
学生の「日本語のレベル」にばかり目がいってしまうことがありますが、「異国で生活する一人の外国人」として見てみることでよりさまざまなアプローチをかけてあげることができるかもしれませんよ。
まとめ
いかがでしたか?
みなさんは「五者」のうちいくつ身についていると思いますか?
例え身についていなくても、これらを意識して行動することで、必ずワンランク上の教師になれることでしょう。
最後に、私が考える「日本語教師の五者」を以下にまとめます。
役者・・・人を惹きつける力を持つこと。
芸者・・・楽しく学べる環境を作ること。
易者・・・相手に良い道を示してあげられること。
医者・・・体力面や精神面で支えてあげることができること。