日本語教師のコラム

日本語教師の資質と能力

日本語教師の資質と能力

前置き

日本語教師に必要な資質や能力とはどんなものでしょうか?

この内容については文化庁のサイトにある調査研究報告「日本語教育のための教員養成について」に書かれています。

この調査研究報告は、「日本語教員の資質向上とその養成に関し一層の改善を図るため,教育内容の意義や在り方について幅広い観点から議論を行い、その結果をまとめたもの」とされています。

特に近年は日本語学習者は留学生だけでなく、大人から子供までさまざまなビザを持って日本で生活している日本語学習者が増え、その多様化に対応できるよう教師の資質や能力の改善、向上のためにまとめられたものです。

私自身、この多様化した学習者を相手に日本語を教える機会の方が多いです。

長い間留学生を対象に教えてきた教師が、多様化した学習者にも同じようなスタンスで教えているケースをよく目にしますが、やはりそれでは効果的な教育はできていないと感じています。日本語教師の質を向上させるためにはこの多様化に対応できるようにならなければならないでしょう。

例えば、以下のような学習者がいます。

留学生

年齢層10代後半~20代前半

目的主に大学/大学院進学

会社員

年齢層20代前半~50代後半

目的就職、転職、キャリアアップ

家族滞在

年齢層10代未満~

目的生活会話の習得

留学生は基本的に日本語学校で週20hの学習をしていますが、仕事をしている方や家族がいる方は毎日学習することはそんなに簡単じゃありません。加えて留学生のように80%以上の出席率の確保が必要なわけではなく、強制力もありません。
この違いだけでも、教師が学習者に接するスタンスを変える必要があるのは明らかでしょう。

仕事をしながら語学を学ぶということの大変さを改めて教師も理解しなければなりません。
私自身、仕事をしながら英語、中国語、韓国語の教室に通っていたことがあります。
正直毎回しっかりと宿題を提出して、テストも良い点数を取っている学習者には脱帽です(笑)

ただ、先生がこんなこと言ってくれたから忙しいけど頑張れたなーなんて思ったこともあります。
教師は日本語を教えるだけでなく、学習のモチベーションを左右する存在でもあります。

日本語教師の皆さんには、学習者の背景までしっかり理解してもらえたらと思います。

前置きが長くなり過ぎましたが・・

現場の教師に改めてこれらの内容について問うと知らないという教師も多いので、「日本語教育のための教員養成について」に書かれている「日本語教員として望まれる資質・能力」についてまとめてみたいと思います。

日本語教員として望まれる資質・能力

まず、実際この研究報告に書かれている内容をそのまま抜粋します。

日本語教員として望まれる資質・能力

今後の日本語教員養成における新たな教育内容を提示するに当たって、日本語教員に求められる資質・能力として、次のような点が重要であると考える。

ア 日本語教員としての基本的な資質・能力について
日本語教員として望まれる資質・能力として、まず基本となるのは、日本語教員自身が日本語を正確に理解し的確に運用できる能力を持っていることである。その上で、これからの日本語教員の資質・能力として、次のような点が大切であると考える。
(ア)言語教育者として必要とされる学習者に対する実践的なコミュニケーション能力を有していること。

(イ)日本語ばかりでなく広く言語に対して深い関心と鋭い言語感覚を有していること。

(ウ)国際的な活動を行う教育者として,豊かな国際的感覚と人間性を備えていること。

(エ)日本語教育の専門家として,自らの職業の専門性とその意義についての自覚と情熱を有すること。

イ 日本語教員の専門的能力について
次に、日本語教育の専門家として、個々の学習者の学習過程を理解し、学習者に応じた適切な教育内容・方法を判断し、それに対応した効果的な教育を行うための、次のような能力を有していることが大切である。
(ア)言語に関する知識・能力
外国語や学習者の母語(第一言語)に関する知識,対照言語学的視点からの日本語の構造に関する知識,そして言語使用や言語発達及び言語の習得過程等に関する知識があり,それらの知識を活用する能力を有すること。

(イ)日本語の教授に関する知識・能力
過去の研究成果や経験等を踏まえた上で,教育課程の編成,授業や教材等を分析する能力があり,それらの総合的知識と経験を教育現場で実際に活用・伝達できる能力を有すること。

(ウ)その他日本語教育の背景をなす事項についての知識・能力日本と諸外国の教育制度や歴史・文化事情に関する知識や,学習者のニーズに関する的確な把握・分析能力を有すること。

※文化庁「日本語教育のための教員養成について」より抜粋

この内容は「日本語教育能力検定試験」の学習内容でもありますので、一度は読んだことがあるという方は多いのではないでしょうか?

実際の教師を見て、不足していると感じる点を一つ抜粋してみます。

日本語ばかりでなく広く言語に対して深い関心と鋭い言語感覚を有している。
外国語や学習者の母語(第一言語)に関する知識,対照言語学的視点からの日本語の構造に関する知識。

「深い関心」と「鋭い言語感覚」、「対照言語学的視点」と書かれているように、決して外国語が流暢であることを指しているわけではありません。あくまで学習者の言語に関心を持ち、日本語との違いを理解することに努めるというような話です。
ただ、今まで会った教師の多くはもともと自身が有している言語のみで学習者の言語に向き合っている方はあまりいないと感じます。日本語教師としては最低限理解しておかなければ効率的な指導ができるわけがないはずなのですが。
ある程度身近な言語でいうと、以下のような知識です。

英語はSVO言語、日本語はSOV言語
中国語は品詞の活用がない、日本語は活用がある
韓国語にも日本語にも助詞も活用もある

韓国人にとっては「食べる」「食べた」「食べられる」などの活用の変化は理解しやすいですが、中国人は「吃」「吃了」「会吃」のように「了」「会」などと一緒に使って活用を作り出しているので、なかなか最初は理解することが難しいですよね。
このように他の言語の知識を最低限知らないと、良い授業はできないですよね。
「教案作り」でいっぱいいっぱいになり、このような知識まで習得しようという方は少なく感じます。ぜひ他の言語に関心を持ってもらえたらと思います。

上記の文に一度目を通して、不足しているなと感じる部分があれば、ぜひ一度初心に戻って日本語教師の資質、必要な能力とは何かを考えてみてくださいね。

まとめ

私自身「日本語教師の資質と能力」について語れるほど知識や能力があるわけではありません。
今でも毎日のように日本語の奥深さを感じて知識の無さを痛感しています。

ただ、教師の方が皆そうであるわけではないのですが、「教案を作ること」「授業をすること(自己満足)」だけに心血を注いでいる教師が多いように思います。教案を作るだけでなく、自分の知識として定着させ、それを活用することが大事です。授業をするだけでなく、個々の国籍やバックグラウンドまで考慮することも必要ですし、学習者の勉強のモチベーションを高めるために声かけをすることも必要です。
また、任された仕事だけでなく、「日本語教師としてできること」を更に模索し、待遇も良くないと言われる日本語業界を根本から変えてやるんだぐらいの意志を持てる方が今後この業界で必要である人材だと感じます。
私自身、そういう想いがある方と一緒にこの業界を盛り上げていけたらと思っています。

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