前置き
「若者言葉」と聞くとどんな言葉を思い浮かべるでしょうか?
毎年新しい言葉が若者によって作り出されています。
日本語教師たるもの、日本語には精通していたいと思いますが、次から次へと生み出されるので正直ついていけていませんよね。
ただ、日本人以上に流行に敏感な日本語学習者も多く、授業中に「先生、○○って知っていますか?」と聞かれることは多いです。
学習者も若者言葉には興味があるので、他の学生達もこの話題に食いつきます。
しかし、そんな時先生が「知らない」と授業の効率は悪くなります。
「知っている学生に説明してもらえばいい、それも日本語の練習だ。」という教師も多いですが、果たしてそうでしょうか。
学習者が日本語だけで上手く説明することはある程度レベルの高い学生でも難しいです。そのため、英語や母語を用いて説明を始めてしまうというケースも少なくないでしょう。
そのため、授業を効率的に進めるためには、教師は幅広い言語知識を持っていた方が良いに越したことはないのです。
ぜひ日本語教師の皆さんには若者言葉、流行語に敏感になってもらえたらと思います。
ちなみにですが、「日本語教員としての基本的な資質・能力について」文化庁のサイトに調査研究報告が掲載されていますが、日本語教師の基本として「日本語教員自身が日本語を正確に理解し的確に運用できる能力を持っていること」「学習者のニーズに関する的確な把握・分析能力を有すること」など記載されています。
現在の学習者は、日本の文化、例えばアニメや漫画などから日本語に興味を持ち始めた人も多いので、きっと若者言葉も学習者のニーズの一つであると思います。
「日本語教師の資質や能力について」は以下でまとめてあるので、良かったら読んでみてくださいね。
若者言葉とは
そもそも、若者言葉とはどのように定義されているものでしょうか?
Wikipediaに記載されている内容を引用します。
主として20歳前後(10代から20代前半)の青少年が日常的に用いる俗語・スラングなどで、それ以外の世代ではあまり用いない言葉のことである(近年では他の世代に広まった言葉も存在する)。若者言葉には最近になって使われ始めたものと、古くからあって代々若者に受け継がれるもの(例:体育会系に多い語尾の「っす」など)があるので、共時的だけでなく通時的に見る必要がある。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より。
言葉の通り、若者が日常的に使う言葉のことですが、今は若者ではないけど数十年前は若者だった人達が作り出した言葉も若者言葉の一種ということですね。そして、過去に若者言葉として使われていた言葉が今も定着しているか、定着していないかなどで若者言葉は4つに分類することができると言われています。
これは日本語言語学者である井上史雄さんが分類したもので、その分類表もwikipediaから引用します。
若者が老いて不使用 | 若者が老いて使用 | |
後の若者不使用 | 一時的流行語 新語、時事用語、はやりことば | コーホート語(同世代語) 生き残った流行語、世相語 |
後の若者使用 | 若者世代語 キャンパス言葉、学生用語 | 言語変化 新方言、確立した新語 |
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
それぞれどんな言葉があるか整理してみましょう。
ある一定の時期に流行し、将来的には誰も使わなくなる言葉。
チョベリバ:超very bad(ベリーバッド)の略
MK5:まじ切れ5秒前の略
今の若者も年老いた方も現代で使ってる人はほぼいないですよね。
ある若者の世代で使われた言葉で、その世代だけで老いても使われる言葉。
ゲッツ:お笑い芸人のダンディ坂野さんのネタ
アッシー:自家用車で女性を送り迎えする男性。自動車を自分の移動手段である「足」として考えられていることから。
今の若者は使わないですが、「ゲッツ」などは時々冗談で使ってる人は今もいる気がします。
ある時期に若者の間で流行し、将来に渡って若者の間で使われる言葉。
代返:授業の欠席者が、出席している学生に代わりに返事をしてもらうこと
フル単:フル(全部)単位を取得すること
「代返しといて」というのは今も使われますよね。年老いてからは誰も使わない言葉です。
一般化され、誰もが使う辞書にも掲載されるようになっていく言葉
ら抜き言葉:「食べられる」が「食べれる」など「ら」を抜いた言葉の使い方のこと
サボる:仕事や授業などを怠けること
どの世代でも一般的に使われている言葉ですね。
若者言葉の特徴
若者言葉にはいくつかの特徴が見られます。その一部を簡単に紹介したいと思います。
隠語的
隠語とは特定の仲間内だけで理解できる言葉のことです。
若者言葉には周りの人に何を言っているかばれないように作られたという背景があることが多いです。
先に挙げた「チョベリバ」などもその一つです。
一言聞いただけでは意味がわからないと思います。
このような背景もあり、言葉の意味が公に周知されると、使われなくなるケースが多いことも特徴です。
言葉遊び
文字の通り、言葉の利用を遊びとして捉えて使っているケースが多いです。
言葉自体はもちろん、言葉のイントネーションなどからその言葉を使うだけで楽しい気持ちになれることがあります。
そのような言葉を使っている人達は、お互いより親近感が生まれ良い交友関係を構築できることがメリットです。
方言
もともとは地方で使われていた方言が若者言葉として一般化したケースも多いです。
大阪弁である「めっちゃ」や中部地方が由来とされる「じゃん」などの言葉は今では皆が使っている言葉ですよね。
言葉の簡略化
SNSが浸透していくことで、できるだけ短い言葉で伝えられるように工夫して生み出された言葉も多いです。
「了解」→「りょ」→「り」と簡略化して進化した言葉など良い例でしょう。
「orz」のように人が悔しがっている様子を表現するように文字だけで使える表現もあります。
他にも言葉をローマ字にして簡略化するケースもあります。「KY」は「K(空気が)Y(読めない)」という意味で使われています。
まとめ
若者言葉は4つの分類に分けられることやさまざまな特徴があることを説明しました。
日本語教師も若者言葉を教える機会は多いと思います。
大学進学を目指している留学生に「若者世代語」を教えることは有用ですが、そうでない学習者にはどうでしょうか?
そのようなことを意識しながら「若者言葉」を紹介すると、教師としてのスキルもレベルアップしていくかなと思います。
また、若者言葉には「言葉遊び」としての特徴があると記載しているように、言葉自体が楽しく思えるものが多いです。
この利点をうまく活用して、授業を活性化させ、学生との距離を縮めることができるといいですね。
ぜひ、最新の流行語には敏感になるようにしてくださいね。