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前置き
現在、日本語教育は多様化しており、留学生だけではなくさまざまなバックグラウンドを持った学習者が増えてきています。そのため、専門用語を学びたいと相談に来る学習者も増えています。また、日本で就職を目指す外国人も増えてきており、就職面接対策をする場合も教師はその業界について知る必要があります。
そのような背景もあり、日本語教師はさまざまな業界の仕事についても精通し、最低限の専門用語は知るべきだと思っています。
「日本語教師が業界の専門知識を知るべき理由」については以下にまとめてあるので、一読してみてくださいね。
今回は「不動産業界」について書いてみたいと思います。
一口に不動産業と言っても、その業務内容は多岐にわたっている事をご存じでしょうか?
不動産仲介業者:物件の売買や賃貸の仲介を行う業者
管理会社:不動産物件の管理を担う業者
住宅販売会社:不動産の販売を行う業者
不動産コンサルティング:顧客からの不動産に関する相談に応じてアドバイスを行う業者
会社の中には、1つの業務を専門で行うものから、複数の業務を1つの会社で請け負っている所もあります。
不動産業界の特徴
業界動向サーチの調査によると、不動産業界の特徴としては以下のようなものが挙げられます。
伸び率:+7.3%
利益率:+3.4%
平均年収:673万円
2020年現在では、新型コロナウイルスの感染拡大によって、在宅ワークが普及しています。そのため、オフィスビルに空室が見られる一方で、好立地のオフィスビルは好調であり、不動産の購入が拡大している面もあります。
不動産業の平均年齢は会社によって大きく違うのも特徴の1つです。平均年齢が20代と若い世代が多い会社もあれば、不動産コンサルティングに従事する会社は高いレベルでの知識や経験が求められるため平均年齢も高めになっています。
また、不動産業は勤務して経験を積む中で、建築法や借地借家法などの専門知識が得られます。加えて、こうした専門の資格を取得すると、給与額が増える制度を取り入れている企業もあるので資格を取得する人が多いのも不動産業の特徴と言えます。
仕事概要
不動産業は前述した通り、その業務内容が多岐にわたっています。
基本的には、個人の顧客に対して住宅を販売したり賃貸物件を案内する、もしくは法人を相手として土地開発の事業を進めたりしています。
個人向けであれば、相手がどのような物件を探しているのか、購入したいのかというニーズを聞き出して最適な不動産を案内していきます。
法人向けであっても、新しいオフィスを探しているオーナーへ最適な物件を案内するといった仕事は個人向けの仕事と一緒です。しかし、法人向けの仕事の場合は、住居以外の不動産、例えば店舗や倉庫、投資目的での不動産などの販売や紹介が業務の一環になってきます。
求められるスキル
不動産業界は多岐にわたりますが、求められるスキルは大きく2つあります。
顧客のニーズを把握する分析力
個人であっても法人であって、相手の求める物件を聞き出して提供する形式は変わりません。その際、熟年の夫婦が「2人で過ごせる賃貸物件を探している」と聞いた時に「この物件は近くに公園がありますよ」などと説明しても顧客は満足できません。
「歩いてすぐの場所にスーパーやジムなどの施設があります。駅から近いので将来的に売却を検討する時も資産価値が高いですよ。」というように、顧客が何を求めているかを分析して、最適な物件を案内するスキルが必要です。
行動力
不動産業は相手の都合でスケジュールが決まる仕事です。賃貸物件や販売している不動産を内覧して顧客を案内する仕事もそうですが、普段から地域をまわって「相続した土地を何とかしたい」「不動産投資に興味がある」といったニーズを掘り出さなければなりません。また、地域の建売屋などで未公開の物件がないか回るのも仕事の1つです。
そのため、軽いフットワークと行動力が求められるのです。
仕事の流れ
仕事の内容によっても変わりますが、「不動産業」と聞いて多くの人がイメージする街の不動産屋さんの仕事の流れを説明します。
9時頃:出勤して、店舗を掃除したり、顧客のメールなどの問い合わせに対応したりします。
10時頃:開店し、来店客の対応をします。内覧希望があれば車などで案内します。
13時頃:物件情報の更新や調査をします。
15時頃:地域の建売屋で物件をチェックします。
17時頃:物件のオーナーや不動産管理会社などから、お知らせや資料が届いたら、チェックして整理しておきます。
専門用語
不動産業界の専門用語にはいろいろなものがあります。
宅建:国家資格の一つで「宅地建物取引士」になるための試験です。不動産業界で働くために有利になる資格で、待遇のアップにも繋がります。不動産で働くスタッフのうち、5人に1人はこの資格を持ち、登録をしていなければなりません。
重要事項説明:宅地建物の取引で、宅地建物取引業者が取引当事者に対して契約上重要な事項を説明することをいいます。一般的に略して「重説」と言われ、「宅地建物取引士」でないとできない行為の一つです。
売り建て:土地を売って、それから住宅を建てることです。顧客の希望を盛り込んだ住宅を建築して販売する形式です。
建売:すでに建築された建物を販売する形式のことです。
基準地価:基準地価とは、各都道府県内から選んだ全国2万カ所以上の基準地の標準価格のことです。国土利用計画法に基づいて、価格審査の基準や、一般の土地取引価格の目安になっています。
イニシャルコスト:初期費用ともいいます。設計費用や建築費用など、物件が完成するまでにかかる費用です。
ランニングコスト:物件の維持にかかる費用です。
ライフサイクルコスト:建築してから解体するまで、その物件の生涯費用です。
レインズ(REINS):不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムです。レインズを使えば、どの不動産屋でも登録されている物件を調べることができます。
おとり物件:実際には存在しない、取引できない物件をあえて顧客を呼び込むために出す広告のことです。これは違法行為のため、発覚した場合は業者が処分を受けます。
さらし物件:買い手がつかず成約していない物件。長い間『さらしもの』になっている状態の物件で、値段が高すぎたり、いわくつきであることが原因です。
不動産業界のメリットとデメリット
不動産業界のメリットとデメリットをいくつか挙げてみます。
メリット
業務に携わる事で、建築法や借地借家法といった専門知識がみにつきます。
実力があれば、若いうちから役職がつき、責任のある仕事を任されることもあります。
給与や賞与に成果報酬が組み込まれている会社が多いため、やればやった分だけ自身に返ってきます。
求人募集が多く、転職や就職をするハードルが低い。
デメリット
来店や問い合わせは土日が多いため、平日休みが一般的です。結婚した女性の場合は家事と育児との両立が難しい場合があります。
まとめ
不動産業は、業務内容がさまざまであり、会社によって携わる仕事が大きく異なる場合もあります。
そのため「どんな仕事がしたいのか」によって、就職するべき会社を見極めなければなりません。
景気に左右されるため、不景気時には不安定になったり、平日休みのため友人たちとスケジュールを合わせづらかったりすることもあります。
ですが、仕事に携わる事で専門知識が身についたり、給与やボーナスに成果報酬が組み込まれているため、仕事をした分自分に返ってきたりと、やりがいを求める人には最適な職業といえるでしょう。